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子どもとのすれちがい

はじめに〜すれちがいを恐れずに無理をしないで〜

「出会う」ための四つの原則

.子どもたちと「出会う」(1)〜生活・文化を知ること〜

子どもたちと「出会う」(2)〜思いや願いをつかむ〜

子どもたちと「出会う」(3)〜仲間関係に実践の視点を〜

子どもたちと「出会う」(4)〜教師自身が自らを解放する〜

おわりに

□ 塩崎義明/雑誌「生活指導」1996年11月号掲載 □

3.子どもたちと「出会う」(1)〜生活・文化を知ること〜

まず、子どもの生活を教師として知っているということが大切ではないでしょうか。

毎週土曜日になると遅刻してくる子どもがいました。

私の学校では土曜日の1時間目は毎週朝会なので全校が体育館に集まっているところにその子は遅れてくるので特に遅刻が目立ちました。

他の先生は「週末で気持ちがゆるむからだ」と彼に批判的でした。しかし私と私のクラスの子どもたちは、彼の母親は金曜日の夜は仕事が遅くて土曜日は朝起きられなくて、土曜日の朝は彼が家の仕事を全部やってくることを知っていました。

彼の生活を知ることではじめて実践がスタートします。彼の生活を知ることこそ彼や学級の子どもたちとのすれちがわずに、子どもたちと出会える第一歩であると考えています。

同様に、「発達課題を知る」ということも重要な視点です。子どもの自立を促していこうとするときにその発達にどのような課題があり、その課題克服のためにはどのような指導が必要であるのかを知っておくことはとても大切なことです。

「文化を知る」ということについてはどうでしょうか。

先に述べたように、子どもたちの文化になじめないことを恐れる必要はありませんが、それは何も知らなくてもいいということではありません。今、子どもたちはどんな文化状況の中で生活しているのかを知ることは、やはり大切なことであると考えています。

私は今年「フォーラムノート」というノートを作って、子どもたちと「書きコミュニケーション」を楽しむとともに、彼らの文化につきあっています。次のようなノートです。

(1) テーマごとにノートを作ります。

(2) そのノートは教室の後ろに置いてあって、誰でもいつでも書き込めるようにしておきます。

(3) 人気のあるテーマのノートは複数用意します。

(4) 書き込みは匿名・ニックネームを認めます。

(5) 子どもたちの要求でどんどんノートは増えることになります。

たとえば、次のようなノートがあります。

○芸能関係のノート。
・流行の曲や、アイドルの話題がつづられるノートです。このノートのおかげで私もなんとかこの系統の文化についていけています。

○スポーツ関係のノート。
・プロ野球やJリーグの話題が多いです。

○悩み事ノート。
・やはり友だち関係の悩みが多いです。次に多いのが親へのグチですね。

○クラス全体の話題。
・このノートは最初は私の方から意図的に話題を提供していく必要があります班長や実行委員、グループリーダーなどが主に書き込んでいます。

○キャラクターの紹介ノート。
・このノートは、一種の「落書きノート」です。このノートのおかげで、今の子どもたはキャラ好きなことを知りました。何人かの子どもたちは自分を表現するキャラクターを作っています。また、このキャラクターが活躍するストーリーを持った漫画も時書き込まれます。

○創作物語ノート。
・子どもたちが創作した物語を書き込んでいくノートです。途中まで書いて、「続きはオネガイ」と書いて、リレー式に物語が進行しています。

また、これらのノートとは別に「裏フォーラムノート」というのもあります。「フォーラムノート」は公開ですが「裏フォーラムノート」は非公開です。私と何人かの子どもたち、または個人で進めるノートです。

このように、子どもたちの文化になじめなくても、ねばり強くつきあっていったり、時にはこちらから「文化・価値」を子どもたちに発信していくことを意図的に進めていく必要もあると考えています。

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