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学校の弾力化と少人数教育
この文章は、浦安市のすべての少人数教育推進委員の教員のみなさんへの応援歌です。

このホームページでも、下記のページで、千葉県浦安市で、25人学級を公約にした市長が誕生したことを報告しました。

本気なの?25人学級

その中で私は、市長の公約をひとつのきっかけとして、私たちが長年運動してきた「少人数学級」実現の運動を広げることを呼びかけつつ、一方で、上からの少人数学級の動きについて、以下のような疑問をホームページでも投げかけておきました。それは、

1)上からの「少人数学級」は「能力別学級編成」や「選択制」とセットになっているのではないか。

2)実質「学級」という概念をなくしていくことを目的としているのではないか。

ということが当時からとても気になっていたのです。

その後、浦安市では「少人数学級」という言葉を「少人数教育」というふうに名前を変えつつ、今年度から市内に60人の市職教員(少人数教育推進員)を配置(各小・中学校に2〜4名)はしましたが依然として「少人数学級」には背を向けたままです。

さらには、文部省の研究会議は、現行40人が上限の学級定員の基準を、一律30人などに引き下げる少人数化について、財政負担が重すぎることから見送る内容の報告素案をまとめ、これに代えて制度運用を弾力化、自治体裁量で教員を増員し、学級を少人数化できるようにするという報告をしています。

そしてそれを受けて、浦安市だけではなく京都市でもこの「少人数教育」の研究を行うため、約30の小学校に講師1人を新たに配置することを決めました。こういった動きは、浦安市や京都市だけではなく全国に広がりつつあります。

このように考えていくと、どうやら浦安市の取り組みは、文部省の先取りをしたということが考えられます。

そこで、昨年から私が考えてきた内容をここでもう一度整理してみる必要を感じてきたので、この場をかりて問題提起をさせていただくことにしました。

1.フレクシビル化に対応できる教員として

浦安市の各学校に60人配置された「少人数教育推進員」の先生は、本校では4人配置され、その4人ともこの夏に県職教員採用試験を受ける予定の若い先生です。つまり、実質的に「単年度契約教員」であると言えます。

各学校でによって、その対応に違いはありますが、本校では、この4人の少人数教育推進委員の教師と教務主任、ならびに県職のTT要員の先生の合計6人が、学習・生活指導の補助として各学年に配置されることになりました。

ちなみに、この4人の少人数教育推進委員の先生の服務規定は、たとえば年休は10月からで、それ以前に休むと欠勤になってしまいます。また勤務時間は8:15〜16:45で、本校では給食や昼休みは休憩をとらなければならないということで、子どもへの指導は認められておらず、その時間は職員室で待機しています。

また、月〜金が7.5時間、土曜日が4時間勤務での時間給で、時間外の職務は基本的に認められていません。やむを得ない場合は、委員会の承認が必要で、そのために事前に届け出が必要です。それでも月の時間外の合計は2時間を超えてはならないことになっています。

つまり子どもへの指導に対する時間給ですので、長期休業中のお給料はありません。さらには交通費がともなう校外学習も現時点(2000年5月時点)では認められていません。

日常的には週に15時間程度の学習・生活指導の補助を行うことになっており、その時間割は、各学校・学年の裁量にまかされています。

本校では、それぞれのクラスの中の時間割に、少人数教育推進委員の先生が入る時間や教科を決めたり、学級をその時間だけ解体し、習熟度別の臨時学級を編成しつつ、少人数教育推進委員の先生の力をかりながら指導を進めてもよいことになっています。

そしてもちろん総合的な学習の時間での、テーマ別クラス編成などでも、少人数教育推進委員の先生は大いに活躍するわけです。

つまり、少人数教育推進委員の教師は、学校の指導の弾力化に対応できる服務規定と勤務体制、そして任務をおっているわけです。私たちはこのことに目を向けなければならないのではないでしょうか。

つまり少人数教育推進委員の教員は、学校の「フレクシビル化(弾力化)に対応できる教員」でもあるわけです。

2.「学級」がなくなっていく……

最近の小学校内部では、指導の弾力化がいっそう進み、「学級担任制」を基礎とした指導体制が変えられようとしていることを最近特に強く感じています。

たとえば「学級崩壊」に対する対策として、教科ごとに教師が入れ替わるなどの対策がとられる学校が増えてきていますが、これは実質的な学級担任制の解体です。

また、教室の壁をとりはらうフリースクール的な取り組みも、学級崩壊という宣伝を追い風にして広がってきています。

さらには、総合的な学習の時間の多くは、学年単位で指導が進められようとしています。そこでは、子どもの「興味・関心」によって少人数グループが学級の枠を超えて組織されるなどして、少なくともその時間は学級が解体される状態になっています。

そして、子ども数の減少によって、単学級の学年が増えてきています。そのことにより、異学年合同での学習も増えてきています。学区の自由化の広がりは、さらにこういった学校を増やしてていくかもしれません。

私は、「学級担任制」を基礎とした学校を絶対化することは逆に危険があると考えている一人ですが、これまでの「学級」の意味をもう一度とらえなおしつつ、このことを考えていかなければならないと思っています。そして、少なくとも最近の学校の変化は、実質的に「学級担任制」の解体の方向へと動いていることは確かだと思っています。

まず一つ目の心配は、こういった、実質的な「学級担任制」の解体は、子どもたちの自治のよりどころを解体し、父母の学校参加への道をせばめる危険性があるのではないかということです。なぜなら、学級というのは、そもそも生活や授業のためだけではなく、子どもたちや父母の要求が集まるところだと考えるからです。

また、児童会や生徒会は、学級を基礎的集団として組織されてきた学校が多かったのですが、特に小学校では児童会活動が完全に切り崩され、学級は児童会の基礎的な集団として機能していません。代表委員会さえ開かれない学校が増えてきています。

「学級」の解体はこれらの児童会活動の衰退をますます進めることになるような気がします。

そして何よりも、少人数教育推進委員といった、学校のフレクシビル化に対応できる教員が配置され、その事実が積み重ねられていることを私たちは無視できないのではないでしょうか。

3.教師の働き方が変わる?

もう一つ私たちが目を向けなければならないことは、総合的な学習の時間を軸としながら学校の弾力化が進められていく中で、私たちの仕事の仕方が大きく変えられようとしていることです。

私たちは、私も含めて、教育内容の変化にばかり目を奪われ、実はそのことにより私たちの足下が大きく変えられようとしていることに気がつかない場合が多いのです。

先に見たように、おそらく文部省は、すでに「学級担任制」を基礎とした学習スタイルは、将来的には考えていないのではないでしようか。そして、そういった変化に対応できる教師の体制をつくろうとしている気がします。

仙台市が2002年をめどに2学期制を導入する動きがあります。そうなった時に、教師の働き方はどうなるのでしょうか?

またいくつかの企業は、自分たちの最新技術を屈指して、理科の出張授業を学校に来て始めているようです。こういったことが広がってきたときに、教師の役割はどうなるのでしょうか?

私たちは、これらの変化を敏感にキャッチしていく必要があるのではないでしょうか。

そして最後に……、
私たち教師や、多くの住民のみなさんが望んでいるのは「少人数教育」ではなくて、「少人数学級」だったはずです。

私は学校の指導体制の弾力化をすべて否定するものではありませんが、これまでの動きを見ていると「『少人数学級』はどうしちゃったの?」という思いが強いのです。

今年度の私の学年は児童数が減り、昨年度4クラスだったのが今年3クラスに減らされ、一クラスの人数が一気に10人増えました。2つのクラスは、39名で、あと一つのクラスは40名です。このことによる指導のむずかしさは、教師ではない方にもわかっていただけると思います。

一方、仕事内容に様々な制限がある中で、少人数教育推進委員の先生方は、本当に一生懸命指導をしてくれています。

一日もはやく「少人数学級」が実現して、浦安市の少人数教育推進委員の若い先生方が、県職の教員として採用される日がくればいいと思っています。

(2000年5月)

webmaster@shiochanman.com