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本気なの?25人学級

1.25人学級が公約の市長が当選
昨年11月、「25人学級」を選挙公約の一つとして掲げた市長(保守系無所属)が当選しました。

当時私たち教職員組合は、すべての立候補者に公開質問状を出していました。そして当選した市長は、当時私たちの公開質問状に対して以下のように答えていました。「25人学級」に関する部分だけ引用してみると、

■設問(1)浦安市の教育施策方針
【回答】
教育荒廃は目に余るものがあり、学級崩壊、いじめ、不登校問題などは全国的な傾向です。私も県議会でさんざん教育問題を取り上げてきて学校の荒廃からどうしたら子供達を救えるのかを暗中模索していた時に、いま日本の教育界では、現在の最も理想的な教育の現場が「僻地の分校教育にある」と知ったときは、大いなる救いを見た思いです。少子化で生徒数が激減している今こそ、都市部である浦安市でも理想の「分校教育」を実践できるのではないかと思っています。最近、幼稚園や小中学校の統廃合問題が話題になりますが、この浦安市での分校教育と学校の統廃合とは全く相容れないものと思います。

 

■設問(2)「30人学級」への考え
【回答】
今や欧米では30人学級は当然で個を大事にと思う国では25人学級が提唱されています。浦安市でも少子化が進んでいる今、それを逆手にとり少なくなった子供を大切に地域で守り育てる状況が可能になってきたと思います。私は25人学級及び2人担任制の(チーム・ティーチング)の導入を主張しますが、少人数のきめ細かい教育環境を作ることが個性を大切にし、学ぶ喜びを与えることにつながり、教育の荒廃問題の解決に大きく貢献することと思います。

さらに、市長選当選直後にも、公約の25人学級の実施については、「来年4月(この4月)に間に合わせたい。モデル校にするのか全校で行うのか検討したい」と述べました。

一方、選挙以前には、千葉自民党県連もその「都市政策」の中で25人学級をうたっており、市長のスタンスが、こういった動きの延長線上にあることは間違いありません。

ただし同党は、昨年12月に県議会に提出された「30人学級の実現」を願う46万人の署名による請願に対しては、あっさり否決しています。あくまでも、上からの教育改革を進めていこうとする考えのようです。

しかしその真意はどこにあるのか、そしてこういった動きは全国に広がっていくのか、今後注目していかなければならないことだと思います。

2.現場のトーンと組合の方針
25人学級を公約に掲げた市長が当選したとたん、現場には「無理に決まっている」「やれるもんならやってみろ」といったトーンが生まれました。

そしてそういったトーンは、当初、組合内部にも流れていたような気がします。
「単なる人気取り」
「当選しちゃってあわてているんじゃないの?」

といった声さえも聞こえていました。

また、自民党県連が25人学級を打ち出していることの真意がなかなか読み取れません。先にも述べたように彼らは私たちの要求をことごとく却下してきたのですから。そこで当時は様々な憶測が生まれました。

・教育問題が吹き出す中で、なんと言っても県民の強い要求があったからかなあ。
・30人でなく25人を打ちだすことで私たちの運動の意味をなくしてしまおうとしているのでは?
・校舎増築で、土建屋さんがもうかるから?

しかしそういったトーンに対して、市の組合は次のような方針をたてました。

☆30人学級を国の責任で実現させることの運動を引き続き進めると同時に、浦安市独自の努力で30人以下の学級を実現させる。

[そのために]
・市長の少人数学級についてのイメージを引き続き聞きこみながら明らかにしていく。
・そのための予算についての試算を1日も早く公開するように要求する。
・すでに人数が少ない学校をモデル校にしたり、教師の人数を若干増やすだけといったごまかしを許さない。

そして特に重視したのが、
・30人以下学級実現のための市民集会を開いたり、そのことについての市民の声を拾うための地域懇談会を開いていく。
・そうした声を生かしながら、我々も少人数学級実現のための学習や、少人数学級の学校になった時の、あらたな学校づくりに視点をあてた学習を進めていく。

3.167名の増員、11億5千万円で可能
12月の市議会では、国に対しての「30人学級の実現を要求する意見書」が賛成多数で採択。

また、25人学級に関しての一般質問に対して、市長は次のように答弁しました。

「私の掲げる25人学級は一クラスの児童生徒が26人以上になったら機械的に2学級に編成替えするものではなく、一人の教職員が受け持つ児童生徒数を実質的に25人に近づけていくことです」

さらには、

「計画的、段階的に実施できるよう最善の努力をしてまいりたい」

と、少しトーンダウン。

もしもすでに少人数の学校をモデル校にするだけだったり、各学校にTTを増やすだけの取り組みになってしまうのであれば意味がありません。

市長の公約や、私たち現場と市民の願いは、あくまでも市内全学校の「25人学級」「30人以下学級」の実現であったはずであることを確認していく必要があると感じました。

しかし市長は、一方では25人の学級編成によって生じる学級数は、小学校で104,中学校で42,それに伴う増置教員が21,合わせて167人の教員が必要であることを明らかにしました。

また、それに伴う人件費として、

「県の新採並の賃金とした場合、およそ6億円、本市教員の平均年齢43歳で試算しますと、11億5千万円。また、非常勤講師て試算すると4億円」

と、その予算を明らかにしました。

私たちとしては、当然正式に市の教職員として採用するのが当然として、非常勤講師を採用するなどの「安上がりにあげる」取り組みにならないように目を光らせ、運動を進めていくことにしました。

4.少人数学級での学校づくり
この原稿を書くまてに私たちは、教育キャラバンとしての地域懇談会を1回、教師を対象とした学級定数についての学習会を1回、「30人以下学級実現のための市民集会」を1回開いてきました。

それらの中であがってきた声は、まず父母・住民の中からは、「クラスの人数が増えることは歓迎」としながらも、

「いわゆるハズレの先生にあたったら、子どもと接触する時間が多くなるのだから悲惨……」

「管理的な教師になったら、とっても窮屈」

といった、正直な声も出されました。

私たちはそういった声を丁寧にひろいあげながら、少人数学級の学校づくりについての学習を進めていく予定です。

以下、個人的な考えですが……、まず、上からの少人数学級の推進は、「能力別学級編成」や「選択制」とセットになっているのではないでしょうか。

一クラスの人数を進めながら、教科ごとに教室を移動し、教科によっては、二クラス合同の授業が行われたりして、実質「学級」という概念をなくしていくのではないかということが予想されます。

もしそうであるのであれば、そういった動きに対置する我々の側の指導や学校づくりの方向性を明らかにしていくことが求められているような気がします。

学級を学校づくりのどこに位置づけるのか。または、もう位置づけない自治のあり方を切り開いていくのか。関連して生徒会、児童会活動の新たな展開とは?そして今、どんな授業が求められているのか。

少人数学級への流れは、私たちにそんなことを課題をもつきつけているような気がしました。

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