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通学区の弾力化問題を目の前にして

1.弾力化スタート?

「うちの息子、どっちの学校に入れようか迷っているのよ」。

同じ学年を組むF先生からこのようなことを言われた時は、最初は何を言っているのかわかりませんでせした。

F先生は、来年度小学校1年生に入学する息子さんがいます。住んでいるのは、勤務校と同じU市です。

よく話を聞いてみると、つまりこういうことのようでした。

(1)F先生は、X地区に住んでいる。
(2)X地区は、I小に近い。歩いて3分。
(3)一方、M小までは10分以上かかる。
(4)にもかかわらず、M小学区に指定されてきた。
(5)それが、来年度の新一年生から、X地区に限って、どっちの小学校に行ってもよいことになった。

結論から述べると、ほとんどの子どもはI小に行くことになりました。距離が近いほうを選んだわけです。しかし、そこに落ち着くまでにかなりの混乱があったようです。

○どっちの学校の方がいいの?
・教師の質問題。
・施設問題。
・いじめや不登校の問題。
・部活動やコンクール。
エトセトラ……。

特に「教師の質」というテーマでは、あることないこと含めて、地域では大いに盛り上がったようです。

2.論点

さて、このことをめぐって様々な視点からトークが広がりました。しかし大きくわけて次の2点に絞られたようです。

^学校は、選ぶものか、つくるものか。
_そもそも学区とはなんだったのか。

この二つの論点からこの問題に切り込むこむことで、今回文部省が打ち出している学区の弾力化の背景にあるねらいが、現場・住民レベルで見えてくるのではないかと思いました。

3.住民自治をはげます学区

そもそも学区というものは、子どもたちの安全面を考慮するものであると同時に、そこに住む住民の自治を励ますものとしてもあるのだと考えてもいいのではないでしょうか。

街づくりの専門の人に学区について聞いてみました。すると、河川や道路といった視点だけで学区を提案するのではなく、そこに生まれるであろう自治会や子ども会といったことも重要な視点であるということでした。

U市は、私立中学への進学率が高いところです。多い年には、クラスの3分の2の子どもが受験した年もあったほどです。

そして私立中学に進学させた父母の声の中に「近所の人たちとの井戸端ができなくなった」というものがあります。

子どもが通っている学校というのは、地域の人たちにとっては、重要なコミュニティーの場を保障する「土俵」でもあったのです。私立中学に通わせたことで、同じ土俵の上にたって「井戸端」ができなくなったというのです。

住民の自治がすべて学区に依拠して進められているわけではありません。しかしそれを発展させるための大切な要素になっていることは確かです。住民自治・学校づくりの観点から「通学区弾力問題」を考えてみてもよいのではないでしょうか。

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