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シラケ・バラバラに挑む

1.はじめに

「今年のクラスはバラバラで…」
「うちも全然まとまりがないのよー」
「何を呼びかけてもシラケていて…」

そんな会話を職員室で耳にするようになるのは5月の連休明けあたりからでしょうか。

そして私もそんな話を聞きながら、

「自分のクラスもまとまってないなー」
「春は毎年ノリが悪いなあ」

などと、その時は思うのです。

しかし次の瞬間に「ちょっと待てよ」と思います。

○まとまるってどういうこと?
○バラバラじゃ、なぜいけないの?
○シラケルことも生きる力じゃないかなあ。

などと、あまのじゃくの私は考えてしまうのですがどうでしょうか。

まとまっている、というのはどういうことでしょうか?
同じ行動がとれることですか?
誰かが何か呼びかけたら、一斉に行動できることですか?
どんな時でも何の疑問も持たないで同じ行動をとる集団は信じられないし、いつもやる気いっぱいっていうのもなんかついていけないし……。

まずそんなことから考えてみることから考えていくことにしましょう。

2.バラバラ・シラケ大好き

私はバラバラな学級が好きです。
シラケることも大切かなって思ってます。
ただし私が言うバラバラとは、

1)それぞれが自分勝手なことを言う力があること。
2)安易に同じ行動をとろうとしないこと

であり、シラケルとは、

3)押しつけられたこと、つまらないことに関しては、はっきりと「おもしろくない」と、批判的な精神でもって、シラケルことができること。

です。

私の中にもありますが、もしかしたら私たちは子どもたちの意見表明を「やっかいなこと」「自分勝手なこと」としてとらえてはいないでしょうか。また、討議・討論抜きで同じ行動を子どもたちに強いてはいないでしょうか。そしてそこからはずれる子どもを「問題児」としてとらえてしまったり、質の低い集団などというとらえ方をしてしまってはいないでしょうか。

また一方で、シラケテいることを「反抗的」「意欲がない」という一面的なとらえかたをしてはいないでしょうか。彼らの感性をマイナスの評価でしか見ない傾向はないでしょうか。

バラバラであることは集団発展のエネルギーだし、シラケていることは、批判的精神の第一歩です

バラバラな集団が対話・討論・討議の力でどのように一致点を見出していくのか、
その過程こそが民主主義です。そしてその過程こそが指導の醍醐味です。

シラケている中にこそ彼らの要求が見えてきます。彼らの隠れた思いはシラケの中にこそあります。

そして、そんな思いに誰も共感しようとしないとき、彼らの中でシラケは「なげやり」に変わります。

3.彼らの弱さ

しかし「バラバラ・シラケ」を肯定的にばかり考えていては指導のとっかかりが見えてきません。これらは彼らの「弱さ」であることもまた、間違いないのです。

つまりそれは、

1)対話・討論・討議をする力。
2)文化を生み出し、育む力。
3)仲間と共同する力。

です。

今「バラバラ・シラケ」が私たちの指導の壁としてあるならば、このような力を自治の指導の中で育てていくことこそ今求められている指導なのかもしれません。

4.思いや願いを拾うことからはじめよう

当面、子どたちの思いや願いをていねいに拾ってみることからはじめてみませんか?

次のようなことがありました。六年生での実践です。

かれらは運動会の練習がきらいでした。二学期が始まったとたん授業をつぶしての毎日の練習。授業がつぶれるのはうれしかったけど、どなられたり殴られたりする運動会の練習は大嫌いでした。

しかも6年生になると競技だけではなくて、運営に関してもいろいろ仕事がまわってきます。教師は彼らが勝手に決めたことを子どもたちにやらせているくせに「主人公は君たちだ」と言い続けます。

そんな大人の調子のよさやズルさは、子どもはもうお見通しです。教師がいくらはりきっても、子どもたちとは完全にしらけていたのです。

「もっと私たちの運動会に対する思いを聞いてほしい」「アイデアをとり入れてほしい」子どもたちはそんな思いを「しらけ」という表現で私たちに訴えかけていました

○組体操を一つのストーリーにするのなんかどうでしょう。地球の誕生から未来までを5〜6年生全員の組みたいそうで力強く表現するんです。

○障害物競走だったら、ぼくたちもアイデアが出せます。いつもアミくぐりと平均台歩きじゃつまらない。借り物競走もありふれているから、「借り人競争」なんかどうでしょう。紙を開くと「メガネをかけたお父さん」「しおざき先生と走ろう」なんて書いてあるんです。

○騎馬戦の作戦会議の時間がほしいなあ。いつも入退場の練習ばかりじゃおもしろくない。最後に残った騎馬同士で勝ち抜き戦の一騎打ちをやるのはどうだろう。大逆転の可能性が出てくるよ。

これらは彼らとの「裏フォーラムノート」での運動会についての話題の一部です。

これらの子どもたちの声は大いに生かされました。とりあえず、子どもたちの声をていねいに拾っていくことからはじめてみませんか。そして彼らの正当な思いや願いを彼らと一緒になって実現していける学校にしていこうではありませんか。

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