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 親の悩み・不安によりそって

最近の世論は、指導が困難な子どもにたいして、その責任をすべて家庭の子育て(特に母親)に求める傾向があるような気がします。

そして学校はそういった世論の傾向を、待ってました!と言わんばかりに利用して、トラブルを繰り返す子どもや学校に来られない子どもに対して、その原因をすべて親に押し付け、学校はそれでホッとしてしまっていることさえあります。

さらには、その親を批判することで、学校の責任を逃れてしまおうという傾向さえみられます。(もちろんすべての学校でということではありません)

他県で聞いた事例を一つあげます。

なかなか学校に来られない不登校の子の事例です。その子は、時々学校に来ても遅刻してくるし、元気がなく、顔色もよくなかったそうです。

聞くところによると、その子の母親は十代で子どもを生み、すでに4人の子どもがいました。しかもその子は、離婚した夫との間に産まれた子、そして下の3人は今の夫との子で、一番下の子は当時生後まもない時期でした。

なかなか学校に来られない一番上の子は、新しい父親の暴力を受けたり、母方のおばあちゃんからも冷たい目で見られ、しかも母親からは下の子の面倒をみてほしいとも言われていたそうです。

ところがその学校は、徹底的に母親批判でした。母親がまだ若いから子育てができないだとか、離婚したことが悪いだとか、さんざん批判していたそうです。

そして、最初にその学校がやったことは母親を叱ることでした。学校に呼びだし「お母さんがもう少ししっかりしないと子どもがダメになる」といった話をしたそうです。

おまけに、今の仕事(スーパーのパート)をやめて、子育てに専念するようにといったことまで言ったそうです。

結果的に、今度は母親による暴力がその子に向けられることになります。そしてついには転校していったそうです。

さて、学校や教師、そして実は私の中にも、「自分はこんなに一生懸命やっているのに指導がうまくいかないのは、家庭の子育てに原因がある。もう少ししっかりと子育てをしてほしい」といった思いがどうしてもあるような気がします。

そしてそういった思いは、子どもの現実が重ければ重いほど、強くなってしまいます。

確かに、家庭での子育ての大切さはあると思うのですがここで私達はもう少しふんばって、今の家族が置かれている現実に目を向けてみる必要があると思っています。

たとえば、「『専業主婦』で幸福になる方法」(洋泉社MOOK)という本が話題になっているそうです。

内容については言及しませんが、タイトルだけに注目してみると、こういったタイトルが注目されるのは専業主婦と言われている女性がいかに大変な思いをしているのかという事ではないでしょうか。

夫婦間の問題や子育ての責任を負わねばならぬ厳しさ、そして地域の中でのおつきあい、さらには子どもの学習に対する不安と焦り。

最近の学校・教師はそんなお母さん達の悩みや苦しみをわからずに父母に対してとても冷たいような気がします。そしてその中でますます追いつめられてしまう母親の気持ちも気になっています。

昨年は残念ながら、「17歳の事件」ということが大きな話題になってしまいました。その名付けの問題があるにしても、今年は、主婦の事件が話題になってしまうのではないかと心配しています。

つまりそこまで子育てや教育に追いつめられているのが今の家庭の「現実」なのではないでしょうか。

そこで私は、父母のみなんさんの話をまずじっくりと聞いてみることを最近特に大切にしています。

「今の若いお母さんたちは価値観が違う」「すごく自己中心的で自分の子どものことしか考えていない」「常識がない」などとつっぱねるのではなく、どんなに学校や教師にとって「それは変だ」と思えることでも、ゆっくりじっくり話を聞いていくと、私達が普段気がついていなかった悩みが見えてくることがたくさんあるのではないでしょうか。

そして、教師はついつい解決を急ぎがちですが、すぐに「こうすればいい」といった解答を示すのではなくて、とにかくまず話を聞いて、一緒になって悩むことが大切なのではないでしょうか。

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