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「教師の夏休みがなくなる」「自宅研修廃止」といった報道がされて話題になりました。 そこでよく新聞を読んでみると、完全五日制になり教師は楽になったのに、その上長い夏休みがあるとは何事か!といった論調が多いです。これには「どうしてそういったとらえかたをするのだろう……」と、ため息をつくしかありません。 もともと私たちはこの夏休みで、法律で決められている年間でとらなければならない休み(夏季職免や厚生職免)をまとめてとったり、これまた法律で決められている健康診断(人間ドック)を受けたり、そして出張があったり、プール指導があったり、日番(日直)があったり、私たち6年生の場合は修学旅行の下見に行ったり(担任は4人なのに2人分しか交通費が出ない)、自分でお金を払って研修会や研究会に出かけたり、さらには2学期の準備のために出勤したりして夏休みの仕事をしているわけです。 部活動を担当している教師は、逆に法律で決められている休みがとれなくて困っている者もいるほどです。これは逆な意味で法律違反になってしまいます。「自宅研修」云々にしても、今までだってその研修内容を事前にきちんと報告してきました。 完全五日制で教師が楽になったというのも事実とは違います。 土曜日分の授業が平日の6時間目にまわってきました。実はそのことはそれだけの問題では終わりませんでした。 つまり、私たちは、子どもたちが下校した後に会議や教材の準備、その他の事務をしているわけですが、授業がその時間にまでくいこんできたので、そういった時間がなくなり、今までの1.5倍、いやそれ以上に忙しくなり、仕事を家に持ち帰ることがこれまで以上に増えました。 「こんなに忙しくなり、気持ちに余裕が持てずにイライラして子どもたちに接しなければならないなら、六日制に戻してほしい」と本気で言っている教師もいるほどです。 先日テレビで精神科医の方が、精神的に病んで通院してくる教師が今年になって増えていることと、その予備軍は教師全体の2〜3割にのぼり、今後さらに増えるだろうということを話していました。このことがこの4ヶ月の現場の状況をよく物語っていると思います。 今年度になって、ますます教師の仕事が大変になったと感じている原因には、他にも 1)今年度から時間割に正式に組み込まれてきた総合的な学習の時間の準備が大変。 2)少人数教育推進という名目で、複数担任による授業や学級を解体しての授業が増えて、その準備が大変になった。 3)完全五日制に対する教師への批判をかわすための書類等々の実務が増えた。 4)保護者や子どもたちの「学校離れ」(意識的な面での)がますます強まり、教師はその信頼関係を築くことがますます大変になってきた。 等々があげられると思いますが、今回はその一つひとつについてはふれません。 ただ、「楽をしている・楽をしていない」という比較だったら、教師よりももっと肉体的・精神的に大変な職種はあるでしょう。しかし逆に「楽?」な職種もたくさんあるわけでして(どこまでが大変でどこまでが楽なのかの基準もあいまいですね)、そういった比較には意味のないことにみなさんはウスウス気がついているのではないでしょうか。 実は本当の問題は、日常的な学校・教師との信頼関係の問題だったのではないでしょうか。それを「教師は楽をしている」「いや、そんなことはない」といった「土俵」に、教師も国民のみなさんものっかってしまってはいないでしょうか。(と言いつつ、上記のように一生懸命言い訳している自分がいるわけですが…) こういった報道によって、ますます学校と教師と保護者の皆さんとの信頼関係が崩れることが心配です。 今は、家庭が悪い、学校・教師が悪いといったことではなくて、お互いにその事情や背景をわかりあいつつ手を結んで子どもたちを育てていかなければならない時代ではないかと思っているわけです。 (02.7.23) |