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子どもをまるごと知ること 「荒れ」と「キレる」の問題を、子どもの心の問題だけでなくて、その背景にある生活基盤全体に目を向けて、「体」の問題からもとらえる必要があるといったことは、女教師刺殺事件当時からの私の考えでした。そのことについては2月2日付けで、このホームページにも掲載しました。
するとその3日後の5日に、朝日新聞の「家庭」欄で、「キレる」ことと子どもたちの食生活の問題に視点をあてた記事が掲載されました。つまり、子どもたちの食生活に、ビタミンB群、鉄、亜鉛などの栄養素が不足していて、それが「キレる」ことの一因になっているということでした。
また、ちょっとのことで興奮し、抑えがきかなくなる問題については、それを脳の発達の問題に視点をあてて考えることもできます。つまり、脳の前頭葉は運動のコントロールや思考をつかさどりますが、たとえばキレるということが、意志や理性を越えたところの行動であるととらえた時、この前頭葉の働きが下がっていることが考えられるということです。
興奮が強くなっても抑えがきくようになるのは、だいたい高学年ですが、これは中学年の時代にギャングエイジ(集団をつくって活動的に動き回る時期)をくぐって、この前頭葉を十分に育てるからです。つまり逆に言うと、前頭葉を育てるギャングエイジをくぐれない子は、中学生になってもちょっとのことで興奮し、抑えが利かない子になるということです。さらには、前頭葉のはたらきが下がると、たとえばよい姿勢を長く保とうとする意志が起こらなかったりして、筋肉が弱くなったりすぐに疲れる体にもなるそうです。
(参考文献)
・UTAN「驚異の科学シリーズ」(10)
今「子供」が危ない学研/1300円
・「脳力アップ」の最新科学
BRAIN SCIENCE講談社/1500円このように、子どもたちの事情をかれらの生活全体からとらえることが大切です。問題がおきた時に、私たちはえてしてそれらを「心」の問題のみでとらえてしまって、「しつけがなってない」とか、「親が悪い」「学校の指導が悪い」で終わらせてはいないでしょうか?そしていつまでたっても子どもの自立についての見通しが持てないでいるのではないでしょうか。
子どもの事情を知ることは大切です。事情も知らずに[いい・悪い]を判断してはいけません。事情を知っている教師であるからこそ、そこに子どもへの共感が生まれ、指導の見通しと意欲がわいてくるのだと考えます。そして、その事情は子どもをまるごととらえることが大切であると思うのです。
('98.2.8)