義務教育改革案について

※この文章は、2004年8月11日に「ザ・教室blog」に書いた記事を加筆・修正した文章です。

千葉県浦安市では、平成18年4月の開校を目指して、小・中一体型の学校を作ります。今回の「義務教育改革案」が出るまでは、安上がりの校舎作り…程度にしか考えていなかったのですが、その考えは甘かったことがわかりました。

「改革案」は、9年間の義務教育を現行の6-3制にこだわらず、市町村ごとに小・中を区分できることを提案しています。つまり、5-4にしたり、4-5にしたりということですね。つまり、浦安市の新しい学校では「入れ物的には」ある意味、準備万端ということになります。「2学期制」というの横の改革の次は、いよいよ縦の改革が本格的に始まるのだと思いました。

まずこの「改革」によって、多様な形での「学力競争」が広がることは間違いありません。つまり、小・中を一緒にすることによりカリキュラムを詰めて短くすることが可能になってきますから、できる子は早目にそのカリキュラムを終わらせて、残りは高校受験の準備のための学習をするといったコースを作ることが可能になります。

そしてその時には、おそらく民間の(進学塾などの)講師をどんどん学校に入れていくのでしょう。(ある地域では、NOVAが英語の授業をやるという噂も……)

一方、勉強が苦手な子には別のコースが準備され、ますます教育内容の差別化が進むことが考えられます。このことはすでに全国に広がりつつある「学校選択制」との関わりで考えていくと、その時からすでに今回のことは考えていたことがわかってきますね。

さて、教師の免許制度はどうするのかと思っていたら(現在は小学校免許と中学校免許は別になっています)、ちゃんと用意されていました。「教員免許更新制」です。

おそらく更新するときに「小・中共通免許」を取得していくと共に、「問題」?があったり「成果」があがっていないと見られた教師はどんどんリストラされていくのだと思います。そしてこのことは、人事考課(管理職による教師評価)との関わりで考えていかなければなりませんね。

ここでいろいろ心配していること。

一つは、過剰な学力競争によって、子どもたちや保護者がますます追いつめられるなあ…ということ。

二つ目は、そのことと関わって、子どもたち同士や保護者同士(地域内)の関係が難しくなるなあ…ということ。つまり、いろいろな人間関係のトラブルが増えてくるでしょうねえ。そしてそのことによって、子ども・教師・保護者が一緒になって学校をつくっていくといったしおちゃんマンの理想はどんどん遠のいていくような気がします。ますます学校は「サービス産業化」していくのかもしれません。

三つ目は、教師は「成果」をあげるために多忙化し、ますます子どもたちとの距離が離れてしまうことが考えられます。教育は「成果主義」では片付けられないところに難しさがあり、しおちゃんマン的には「やりがい」があるのだと思っていましたが、そんなことを言っているしおちゃんマンは簡単にリストラされそうです。

小学校と中学校の文化・スポーツなどの交流は大いに進めるべきだと思いますが、学力競争を過度に誘発し、現場が(教師が)目に見える「成果」に追われてしまうような改革には疑問があります。

改革案の内容が具体化していくにつれて、さらにいろいろな問題が語られると思いますが、とりあえず現場からの第一次感想ということで書いておきます。

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