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学校づくりに向けて保護者とつながる

● 四つの困難

 学校づくりにむけて保護者とつながることが年々困難になってきています。

 その原因の一つは、保護者が学校をサービスを提供するものとしてとらえ、それが細かい要求として学校に向けられ、教師にとってはそれが理不尽な要求に聞こえることが多いからです。

  二つ目は、習い事や塾など、学校以外の場で子どもを「教育」させることが広がり、学校そのものに「期待」を持たない保護者が増えているように「見える」からです。

  三つ目は、子どもたちへの指導が年々難しくなっていることと、にもかかわらず現場はますます多忙化し、教師が子ども一人ひとりと向き合う時間が保障されず、そのことが保護者の不満につながることが多いからです。

  そして四つ目が、保護者同士が警戒と不信の関係にあり、信頼をベースにした対話が成立することが困難となり、その不安と孤立が学校批判に向けられることが増えてきたからです。

● 批判の中にこそ願いを読み取る

  このような状況の中で私たちはどのようにして保護者とつながり、学校づくりを進めていけばよいのでしょうか。

  まず大切なことは、学校や教師に向けられる批判の中にこそ、保護者の願いや要求があるというとらえかたを持つことです。

  確かに教師にとっては理不尽な批判や要求があるかもしれません。

 しかし学校や教師に期待しているからこそそうした批判があるととらえれば、そういった声は真摯に受け止めなければならないのではないでしょうか。

● 現場の事情を理解してもらうこと

  次に、そうした批判や要求があった時には、教師は現場の「事情」を理解してもらうことにつとめることです。

  私たちがおかれている現状はますます厳しくなるばかりです。しかしそういった事情を多くの保護者は知らないことの方が多いのです。したがって、足りなかったところは素直に詫びつつ一方で、そういった事情・現状を理解してもらい、一緒になって子どもたちを育てていくことを呼びかけていく必要だと考えています。

  すると、そうした対話の中で、学校の課題が見えてくることがあります。そしてその時にこそ、その課題解決のための「参加」を保護者に呼びかけ、一緒になって学校づくりを進めていけばよいのではないでしょうか。

  たとえば、子どもたちの登下校時や放課後の安全確保のために学校として取り組んでほしいという要求が出たとします。。しかし今は、その要求は「学校として何もしていない」「子どもたちの安全確保を軽視している」といった学校批判の形で出ることが多いのです。

 一方学校は多忙化の中にあるので、そういった「声」に対して、理不尽な要求としてとらえ、これもまた批判的につきはなしてしまうケースが多いのではないでしょうか。

  しかしここでは先に述べたように、まずそういった「声」を真摯に受け止め、多忙化の中でなかなか手が回らない現状を理解してもらいつつ、同時に、子どもたちの安全確保のために協力してもらうことを呼びかける必要があるのです。

  こうした対話の中で、PTAのパトロールを強化するとか、父親の会をつくって、パトロールをしようとかの新しい提案が生まれたりする例もたくさんあるのです。

子育て共同のセンターとしての学校

 一方で、授業をきっかけに協力を呼びかけることも考えられます。保護者の中には、専門的な知識や技術を持つ人がいるので、そうした人たちに積極的に授業参加を呼びかけ、協力してもらうのです。

  しかしここで大切なことは、こういった取り組みが教師の「仕事放棄」につながってはいけないということです。大切なことは、お互いの役割を果たしつつ足りない面をカバーし、共同して子育てを進めていくことなのです。

  つまり学校づくりとは、学校が、子育て共同のセンターとしての役割もあるということをイメージしながら実践を進めていくことであると考えています。

(2005.2.21)